ラヴェル作曲のバレエ音楽「ボレロ」は、とても有名ですね。
ただ、ボレロはバレエ曲としては、かなり異色の楽曲。
2つのメロディだけで構成され、それが約15分間繰り返されるだけです。
けれども、飽きない!
曲の出だしから引き込まれ、最後まで聴いてしまいます。
ほんと、魅力的な楽曲ですよね。
そして。
単調な曲だけに、ボレロはあらすじがないものと思われがちですが…
実はボレロにも、バレエ音楽さながらのストーリーがあるんです。
この記事では、ラヴェル作曲のボレロのあらすじと巧みな楽曲編成について解説しています。
ボレロのあらすじは?
モーリス・ラヴェル作曲のボレロにもあらすじがあります。
ただ、曲に比例したような形で、そのストーリーもかなりシンプルなものです。
ボレロのあらすじは以下のようになります。
とある酒場で、一人の踊り子が舞台でリズムを取り始めます。
始めは足慣らしに過ぎなかったのが、次第に踊りへと変わり、振り付けも大きくなっていきます。
それを見ていた酒場のお客さんたち。
最初は気にも留めていなかったのが、次第に興味を持ち始め、どんどん踊りに加わっていきます。
そして、最後は全員が一緒になって踊るのでした。
というお話です。
はい、とても単純なあらすじですね。
ですが、この簡潔なストーリーを、見事に曲で表現していますよね。
最初は小太鼓のかすかな音から始まりますが、次々と様々な楽器が登場し、その編成を変えながら進行していきます。
そのまま、楽器の数だけに音が大きくなり、最後は熱狂的な盛り上がりを見せて終わります。
ボレロを最初から通して聴くと、どんどん迫力が増していくのが分かります。
ボレロの意味は?
ボレロ(Boléro)とは元々、スペインのアンダルシア地方に起源を持つ伝統的なダンスとその伴奏音楽を指します。
3拍子のリズムで、ゆったりとしたテンポが特徴で、情熱的な表現がなされます。
ラヴェルがボレロを作曲した経緯は、イダ・ルービンシュタインというバレリーナからの依頼を受けたことに始まります。
ルービンシュタインはラヴェルに、スペインのフォリアという旋律に基づくバレエ音楽の作曲を依頼しました。
ところが、ラヴェルはフォリアではなく、独自の旋律を用いてボレロを作曲しました。
この作品は1928年にパリで初演され、その独特のリズムと徐々に高まる強度で、すぐに大成功を収めました。
ラヴェル自身はボレロについて、「17分間のオーケストラのための練習曲で、ある旋律をほとんど変化させずに繰り返す」と述べています。
そして、革新的な構造と演奏法によって、クラシック音楽における重要な地位を確立しました。
ボレロに登場する楽器の種類は?
ラヴェルのボレロは、先ほど紹介したストーリーで構成されています。
踊りのスケールが大きくなるのを、楽曲では、楽器の編成を変えていくことで表現されています。
では、ここで、ボレロのオーケストレーションを見てみましょう。
- Aメロ
- フルート
- クラリネット
- Bメロ
- ファゴット
- Esクラリネット
- Aメロ
- オーボエ・ダモーレ
- フルート
- トランペット(弱音器付き)
- Bメロ
- テナー・サクソフォーン
- ソプラノ・サクソフォーン
- Aメロ
- ピッコロ(ホ長調/ト長調)
- ホルン(ハ長調)
- チェレスタ(ハ長調)
- オーボエ
- オーボエ・ダモーレ(ト長調)
- コーラングレ
- クラリネット
- クラリネット
- Bメロ
- トロンボーン
- フルート
- ピッコロ
- オーボエ
- コーラングレ
- クラリネット
- テナー・サクソフォーン
- Aメロ
- フルート
- フルート
- ピッコロ
- オーボエ
- オーボエ
- クラリネット
- 第1ヴァイオリン
- フルート
- フルート
- ピッコロ
- オーボエ
- オーボエ
- コーラングレ
- クラリネット
- クラリネット
- テナー・サクソフォーン
- 第1ヴァイオリン
- 第2ヴァイオリン
- Bメロ
- フルート
- フルート
- ピッコロ
- オーボエ
- オーボエ
- コーラングレ
- クラリネット
- トロンボーン
- ソプラノ・サクソフォーン
- 第1ヴァイオリン
- 第2ヴァイオリン
- ヴィオラ
- チェロ
- Aメロ
- フルート
- フルート
- ピッコロ
- トランペット
- トランペット
- トランペット
- トランペット
- ソプラノ・サクソフォーン
- テナー・サクソフォーン
- 第1ヴァイオリン
- Bメロ
- フルート
- フルート
- ピッコロ
- トランペット
- トランペット
- トランペット
- トランペット
- トロンボーン
- ソプラノ・サクソフォーン
- テナー・サクソフォーン
- 第1ヴァイオリン
と、まあ、これだけの楽器が登場し、とても複雑な構成になっています。
しかも、楽器の編成だけでなく、演奏にも工夫がほどこされています。
例えば、始めのフルートは一番低い音で演奏されます。
ところが、フルートはもっと高い音で演奏されるのが通常です。
つまり、ボレロの出だしのフルートの音色は、一般的にはほとんど馴染みのないものなんです。
また、途中で出てくるトロンボーンは、逆に最も高い音で演奏されます。
ほぼ限界ギリギリの音域だそうです。
ボレロにおける小太鼓の重要な役割とは?
さらに、注目していただきたいのは、小太鼓です!
小太鼓(スネアドラム)は、曲全体を通して唯一ずっと演奏され続ける楽器です。
一見すると、小太鼓は全く目立たないですが、実はボレロにおいてとても重要な存在となっています。
ボレロの出だしは小太鼓で始まりますが、通常響き線という音が出る中央部分を叩くのではなく、音が聞こえにくい端っこを叩くという特殊な演奏方法を採用しています。
この演奏により、小太鼓は控えめながらも不可欠なリズムを提供し、楽曲全体の基盤を築きます。
そして、楽曲の最初から最後まで、小太鼓の奏者は同じリズムをずっと刻み続けます。
このリズムは2小節からなり、曲中169回繰り返されることになります。
出だしの音で全てのリズムが決まってしまうという面があり、ボレロは打楽器奏者泣かせの曲としても有名で、クラシックあるあるとしてよく知られています。
このような型破りな演奏方法で、それまでのクラシックには馴染みの薄い音色を織りまぜ、ボレロの独特な雰囲気を作りだしているということなんです。
2つのメロディを繰り返すだけの単純な楽曲であるボレロですが。
聴く者の心を魅了する秘密は、ラヴェルの考え抜かれた緻密な計算にあったというわけです。
まさに「管弦楽の魔術師」と呼ばれたラヴェルの真骨頂!と言えますね。
まとめ
ラヴェルは、私の大好きな作曲家です。
もちろん、ボレロも大好きです。
勉強するときなどに、気合を入れるため、よく聴いたものです。
ボレロはシンプルなあらすじを持つにも関わらず、その魅力は計り知れません。
たった2つのメロディが繰り返されるだけなのに、聴く者を深く引き込む力を持っています。
この背後には、ラヴェルの精緻な計算と創造性があります。
特に、楽器の編成と小太鼓をはじめとする独特な演奏方法が、この曲の大きな魅力を形作っています。
ボレロは多くの人々に愛されている曲ですが、改めて各楽器の役割に注目して聴くことで、新たな発見があるかもしれません。