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カデンツァとはどういう意味?時代と共に変わる音楽における重要な役割

音楽用語

音楽の演奏形式の中で特定の役割を果たす部分として、「カデンツァ」と呼ばれるものがあります。

基本的には、演奏者が即興で自由に技術と表現力を披露するパートを意味します。

より簡単に言うと、アドリブに近いものがありますが、楽曲によってその意味合いは異なってきます。

この記事では、カデンツァの意味と歴史的背景や、ピアノやバイオリン協奏曲での役割についても詳しく解説しています。

カデンツァの意味は?

カデンツァとは、主に協奏曲やオペラのアリアで見られる、独奏楽器や独唱者がオーケストラの伴奏なしに自由に即興的に演奏や歌唱を行う部分のことです。

イタリア語で「cadenza」と表記されます。

この瞬間は、言わば、演奏者が技術的な腕前や表現力を存分に発揮するチャンスとなります。

例えば、モーツァルトベートーヴェンの協奏曲では、第1楽章の終わり近くにカデンツァが配置され、演奏者による華麗な即興演奏が披露されます。

元々は完全に即興で演奏されていましたが、次第にカデンツァが楽譜に記されるようになり、演奏者はその中から選んで演奏するのが一般的になりました。

しかし、カデンツァの質が協奏曲全体の統一性を損なうことを懸念する風潮が高まり、作曲者自身がカデンツァを書くというケースも出てきます。

そのため、カデンツァは形式上は存在しても、演奏者の自由度が制限されることもありました。
この場合、アドリブでは演奏できないということになります。

ですが、基本的にカデンツァは即興で演奏されることが多く、協奏曲の中で特に聴衆の注目を集める部分であり、演奏者の技巧と感性が試される場となっています。

カデンツァの歴史をご紹介

カデンツァは元々「終止形」を意味する音楽用語であり、和声終止形や楽曲の休止や終結を形作る旋律や和声の定型を指していました。

この用語は、ラテン語の「cadere(落下する)」から派生し、16世紀末頃からは「曲の終結部の即興的な技巧的楽句」の意味で使われるようになります。

この時期から、カデンツァは協奏曲やアリアの独奏・独唱部分で即興的に演奏される華麗で装飾的な部分を指すように進化しました。

18世紀から19世紀にかけて、カデンツァは各演奏家が自らのアクロバット的な技を展開する機会となり、演奏技術の高度な披露場として機能しました。

しかし、19世紀後半には、技巧中心の即興演奏に対する反省が生じ、楽譜に忠実な再現を主流とする考え方が広まります。

この変化は、ベートーヴェン以降、作曲家がカデンツァを楽譜に記し、それに従って演奏することが一般的になったことにより加速されました。

現代では、一つの協奏曲に対して複数の作曲家によるカデンツァが存在し、演奏家はこれらの中から選んで演奏するのが普通です。

この変遷は、カデンツァが単なる技術の披露から、作品の解釈において重要な役割を果たす要素へと進化したことを示しています。

カデンツァの意味と役割が時代と共に拡大し、深まっていったことを物語っていますね。

ピアノ協奏曲のカデンツァは?

ピアノ協奏曲におけるカデンツァは、独奏ピアノがオーケストラの伴奏なしに演奏する部分で、演奏者の技術と表現力を披露するための重要な瞬間となります。

このセクションでは、通常、作曲家によって指定されたテーマに基づいて即興演奏が行われるか、または作曲家自身が書いたカデンツァが演奏されます。

18世紀から19世紀にかけての古典派音楽では、カデンツァが演奏会での見せ場とされ、演奏者の創造性と技巧を観客に示す機会となりました。

現代では、演奏家が自らの解釈を加えることで、同じ協奏曲でも異なる演奏が生まれ、カデンツァがその協奏曲のユニークな魅力を引き出す役割を果たしています。

バイオリン協奏曲のカデンツァは?

バイオリン協奏曲におけるカデンツァも、ピアノコンチェルトと同じように、バイオリン奏者が技術と表現力を披露する部分となります。

通常は、楽章のクライマックス近くに位置し、オーケストラの伴奏が一時停止する中で、独奏者が即興に近い形で演奏します。

ここでも、ピアノ協奏曲と同様に、作曲家が書いたカデンツァを使用するか、または独奏者が自らの解釈で即興を加えることがあります。

さて、バイオリン協奏曲のカデンツァといえば、やはり、メンデルスゾーンの「バイオリン協奏曲ホ短調」に触れないわけにはいかないでしょう。

メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲は、カデンツァの扱いにおいて特に革新的な作品となっています。

前述したように、カデンツァは楽章の終わりに設けられるのが通例でしたが、メンデルスゾーンは協奏曲の第1楽章の中間部に配置したのです。

さらに、カデンツァを楽章の自然な流れの中に組み込むことで、伝統的なカデンツァの即興的な性質を保ちつつも、作品全体の統一感を高めることに成功しています。

このアプローチは、バイオリン協奏曲におけるカデンツァの位置づけと機能に新たな視点を提供し、後の作曲家たちにも影響を与えました。

メンデルスゾーンのこの画期的な試みは、バイオリン協奏曲の形式と表現の可能性を広げる重要な一歩になったと言えます。

まとめ

カデンツァは、基本的には演奏者が即興で自由に技術と表現力を披露するパートで、アドリブに近いものがあります。

ですが、時代と共にカデンツァは進化し、その役割や意味合いが変わってきました。

元々は完全な即興演奏から始まり、後には作曲家によって書かれることもあり、演奏者の自由度に新たな制約と可能性をもたらしました。

この変化は、カデンツァが単なる技術の披露から、楽曲解釈における重要な要素へと発展したことを示していると言えるでしょう。

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