音楽用語の1つに、「不協和音」というものがあります。
言葉通りには、協和しない、調和しない音という意味です。
一般的には、聴いていると不快になる音とされています。
ですが、作曲をするとき、不協和音を意図的に取り入れ、独特の音色を奏でることがあります。
この記事では、不協和音について、その基本的な意味と楽曲での役割について、詳しく解説しています。
不協和音とは?
西洋音楽では、調和する美しい和音を協和音と呼びます。
一方で、不快と感じられることが多い和音は不協和音とされています。
英語では「Dissonance(ディソナンス)」と呼ばれ、ラテン語の「dissonare」に由来します。
dissonareは「不一致の」「調和しない」という意味を持ち、そこから英語のDissonanceへと発展しました。
音楽の教科書などでは、二つの音の振動数の比がシンプルなほど調和しやすく、複雑になるほど調和しづらいと記されています。
この調和の度合いによって、和音は協和音と不協和音に分類されます。
例えば、短2度や長2度、長7度などの音程は一般的に不協和音とみなされますが、協和音と不協和音の境界は主観的であり、一様に定義されているわけではありません。
ピアノで隣接する鍵盤を同時に押すと、耳障りな音がすることがあります。
これは、音が衝突する感じがするためです。
複数人で歌う際、美しくハーモニーが響くと心地よいですが、音がずれてしまうと不快な響きになることもあります。
ただし、不協和音が必ずしも悪いわけではありません。
実際、意図的に不協和音を用いることで、曲に独特の感覚を加えることができます。
そのため、人間の聴覚が変化している現代では、将来的に協和音と不協和音の定義も変わる可能性があると考えられています。
そして、音楽の進化と共に、クラシック音楽では考えられなかった和音が現代の作曲家によって採用されています。
時代に応じて変化する音楽の中で、不協和音も重要な役割を果たしているというわけです。
日本の雅楽は不協和音?
日本には、古くから雅楽と呼ばれる音楽があります。
雅楽は、高い音域で奏でられる複雑な音の組み合わせにより、日本の神々を象徴しています。
雅楽では、笙(しょう)と呼ばれる独特の楽器が使われています。
この笙という楽器は、見た目が小さなパイプオルガンに似ており、その独特の音色は西洋では不自然に聞こえることがあるようです。
そのため、西洋の音楽理論ではその音色が不協和音と分類されることがあります。
ただし、日本の雅楽が西洋で不協和音に聞こえるかどうかは、聴く人の音楽的背景や文化的な慣れに大きく左右されるものでしょう。
西洋音楽と日本の雅楽は、音階や和音の構成、演奏方法など、根本的に異なる音楽体系に基づいています。
西洋音楽は主に調和的な和声に基づいて発展してきたのに対し、雅楽は独特の音階や旋律を重視し、和声よりも旋律やリズム、音色の変化に焦点を当てた音楽です。
雅楽の音階は西洋音楽のそれとは異なり、特有の間隔や音の進行を持っています。
このような背景により、西洋音楽に慣れ親しんだ耳には、雅楽の旋律や音程が異国的で、時には不協和音に聞こえる可能性があります。
ですが、これは不協和音が音楽的に「間違っている」または「劣っている」という意味ではありません。
むしろ、雅楽はその独自の音楽的表現と美学を持ち、長い歴史を通じて日本の文化や宗教儀式に深く根ざしています。
音楽の美しさや魅力は、その音楽が生まれた文化や歴史的背景に大きく関連しています。
不協和音と感じられるかどうかは、聴く人の音楽に対する理解や感受性によって異なり、雅楽を含む世界中の音楽は、それぞれ独自の価値と意味を持っています。
したがって、雅楽が西洋人に不協和音に聞こえるかもしれないとしても、それは異文化間の音楽的な違いを体験する貴重な機会となるものでしょう。
不協和音を用いた有名なクラシック曲をご紹介
先ほど述べたように、不協和音は単なる不快に感じる音ではなく、楽曲の中で重要な役割を果たしています。
実際に、不協和音を効果的に用いたクラシック曲は多数あります。
ここでは、特に印象的な3つの作品を紹介します。
これらの作品は、不協和音を通じて独特の音色や雰囲気を生み出し、音楽の表現力を拡張しています。
「春の祭典」/ストラヴィンスキー
ストラヴィンスキーの「春の祭典」は、革新的なリズムと不協和音の使用で有名です。
1913年の初演時には、その前衛的な音楽性が物議を醸しました。
私も初めて観たとき、強烈なインパクトを受けました。
正直、なんじゃこりゃ?これがバレエなの?と思いましたね💦
誰もがそう感じると思います。
ですが、現在では20世紀を代表する傑作の一つと広く認識されています。
「春の祭典」では、不協和音が生み出す緊張感と解放感が、春の到来と自然の目覚めを力強く描写しています。
「ピアノ協奏曲ト長調」/ラヴェル
ラヴェルの「ピアノ協奏曲 ト長調」は、ジャズの影響を受けた和声とリズムが特徴的な作品です。
特に第2楽章では、穏やかながらも不協和音を巧みに織り交ぜることで、深い感情表現と繊細な色彩を作り出しています。
ラヴェルは、不協和音を美しさと新鮮さを加えるスパイスとしてよく使用した人物です。
彼の初期の作品である「水の戯れ」も、サン=サーンスによって「不協和音!」と評されたことは有名です。
「浄夜」/シェーンベルク
シェーンベルクは無調音楽の創始者として知られ、彼の作品である「浄夜」は不協和音を基盤とした音楽の新たな地平を開きました。
この作品では、従来の和声規則を超えた不協和音の連続が、神秘的で深遠な音楽世界を創造しています。
シェーンベルクの技法は、後の現代音楽に大きな影響を与えています。
まとめ
不協和音は、基本的に耳障りに聞こえる和音とされています。
ですが、楽曲に独特の色合いを加える要素でもあり、時代と共にその解釈や価値が変化する可能性があります。
楽曲における不協和音の使用は、単に不快な響きを生み出すだけでなく、表現の幅を広げ、聴き手に新たな聴覚体験を提供します。
また、音楽の進化に伴い、かつては不協和音とされた音程や和音が、新しい音楽的文脈の中で再評価され、受け入れられるようになることもあります。
このように、不協和音は音楽のダイナミックな変化と成長を促す重要な役割を担っており、その魅力は時代を超えて再発見され続けていると言えますね。