「オペレッタ」は、一般に「喜歌劇」とも呼ばれ、コミカルな内容が特徴の歌劇です。
ただ、オペレッタという言葉自体があまり馴染みがないかもしれませんね。
一方で、「オペラ」というより有名な用語を耳にすることが多いと思います。
では、オペレッタとオペラの間にはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、オペレッタの特徴と、オペラとの違い、さらには有名なオペレッタ作品についても紹介しています。
オペレッタとは?
オペレッタは、イタリア語で「小さなオペラ」という意味を持ちます。
日本では「喜歌劇」や「軽歌劇」とも呼ばれています。
その名の通り、元々は小形式のオペラ、軽い歌劇のことを指していたようですが、実際には2時間前後の演奏時間を持ち、規模も決して小さくはありません。
オペレッタは、台詞や踊りが含まれる歌劇で、基本的に喜劇の形をとり、軽妙な筋と歌を持つ娯楽的な作品が多いのが特徴です。
ただし、時には喜劇的な展開の中にも、悲惨な結末を迎える作品や、笑いの要素が少ない作品も存在します。
オペレッタは、オペラ系の声楽家、合唱団、オーケストラによって上演されることが原則ですが、セリフのみの役や、一部の役を俳優やポピュラーシンガーが演じることもあります。
特にドイツ圏では、多くのオペラ歌手や指揮者がオペレッタからキャリアをスタートさせることがあり、オペレッタ専門の歌手も少なくないようです。
オペレッタの歴史は、19世紀半ばのパリで始まり、オッフェンバックの作品が人気を博しました。
その後、ウィーンにも飛び火し、スッペやヨハン・シュトラウス2世などの作曲家によって、さらに発展しました。
特にウィーンはオペレッタの中心的都市となり、「こうもり」などの名作が生まれました。
オペレッタは、その親しみやすさから、今日でも多くの人々に愛され続けています。
オペラとは異なり、軽快で楽しい雰囲気を持ちますが、その特徴ゆえに音楽劇の世界において独特の位置を占めているのです。
オペラとの違いは?
では、オペレッタは、オペラとどのような違いがあるのでしょうか?
オペラとオペレッタは、名前が似ていることからしばしば混同されがちですが、実は両者には明確な違いがあります。
その違いとは、起源や作品の性質に関わるものです。
オペラは、16世紀末から17世紀初頭にかけてイタリアのフィレンツェで誕生しました。
この芸術形式は、古代ギリシャの悲劇を現代に蘇らせようとする試みから始まったと言われています。
当初は主に貴族の間で楽しまれ、その後徐々に広く民衆にも受け入れられるようになりました。
一方、オペレッタはオペラから派生した形式で、19世紀後半にパリやウィーンで人気を博しました。
このジャンルは、大衆向けの娯楽として位置づけられ、作品にはコミカルな要素が多く含まれています。
先述したとおり、オペレッタという名前自体が「小さなオペラ」という意味を持っています。
まさに、その名の通り、より軽快で親しみやすい作品ということになります。
そして、両者の最も大きな違いは、作品の傾向にあります。
オペラには悲劇的な作品が多いのが特徴です。
ビゼーの「カルメン」やプッチーニの「トスカ」、ヴェルディの「椿姫」などなど。
オペラの題材として、悲劇的な作品が好まれるという背景もありますが、何故そこまで悲しい結末にするの?と悩ましくなるほど多いです。
個人的な感想ですが、特にビゼーの「アルルの女」は、悲劇を通り越して、恐ろしさを感じさせるものがあります。
一方で、オペレッタはハッピーエンドを迎えるものや喜劇的な作品が主流です。
ただし、全てのオペラが悲劇で、オペレッタが喜劇というわけではありません。
オペラにも喜劇的な作品は存在し、オペレッタにも悲劇的な要素を含む作品があります。
とはいえ、全体的な傾向としては、オペラがより深刻なテーマを扱い、オペレッタがより軽やかで楽しい内容に焦点を当てていると言えます。
さらに、両者には上演時間にも違いがあります。
オペレッタは、2時間前後の作品が多いです。
対して、オペラはそれより長く演奏される傾向があり、2~4時間というものが多いです。
特にワーグナーの「ニーベルングの指環」は、総上演時間が約15時間もあり、最低4日間というスケジュールで行われます。
有名なオペレッタ3選をご紹介
ここでは、有名なオペレッタとして、3つの作品をご紹介します。
「天国と地獄」/オッフェンバック
ジャック・オッフェンバックの「天国と地獄」は、1858年にパリで初演されたオペレッタで、オッフェンバックの代表作の一つです。
この作品は、ギリシャ神話の有名なオルフェウスとエウリディケの物語を基にしていますが、伝統的な悲劇を風刺的に、そして喜劇的に再解釈しています。
物語は、エウリディケが冥界に連れ去られるところから始まりますが、オルフェウスが彼女を取り戻そうとするクラシックな物語とは異なっています。
面白いのは、オルフェウスとエウリディケの関係が冷め切っており、お互いにあまり会いたくないという設定になっているんです。
神々もまた風刺の対象となっており、人間味あふれる欠点や滑稽さを持って描かれています。
「天国と地獄」は、その軽妙な音楽、ユーモラスな台詞、そして社会風刺の要素で大成功を収め、オッフェンバックの名声を不動のものにしました。
なかでも、3部構成となっている序曲は特に有名で、最後の第3部のメロディーは「カンカンダンスの音楽」として広く知られています。
運動会の徒競走などでよく使われる曲ですね。
「こうもり」/シュトラウス2世
「こうもり」は、ヨハン・シュトラウス2世が作曲したオペレッタで、1874年にウィーンで初演されました。
華やかな舞踏会、騒動、そして身分違いの恋など、喜劇的な要素が満載の物語です。
物語の中心は、主人公のエイゼンシュタインが、刑務所に収監される代わりに舞踏会に参加し、そこで起こる一連の誤解と騒動に巻き込まれるというもの。
登場人物たちの間で繰り広げられるドタバタ劇と、シュトラウス2世の軽快で美しい音楽が見事に融合しています。
ワルツの王と称されるシュトラウス2世の代表作の一つであり、オペレッタの最高傑作との呼び声も高いです。
「こうもり」に登場する曲としては、「シャンパンの歌」や第2幕のフィナーレなど評価の高いものが多いですが、特に序曲はとても有名ですね。
ワルツだけでなく、ポルカや行進曲のリズムも取り入れた軽快なメロディーとなっています。
個人的にシュトラウス2世の曲では、「こうもり」の序曲が一番好きだったりします。
「メリー・ウィドウ」/レハール
「メリー・ウィドウ」は、フランツ・レハールが作曲し、1905年にウィーンで初演されました。
富豪の未亡人ハンナ・グラヴァリと彼女を巡る愛と陰謀を描いた作品で、華やかなウィーンの社交界を背景にしています。
物語は、ハンナと彼女の財産を狙う人々、そしてかつての恋人ダニーロとの複雑な関係を中心に展開します。
このオペレッタは、魅力的なメロディー、ウィットに富んだ台詞、そしてロマンチックな愛の物語で大成功を収め、今日でも世界中のオペレッタ劇場で頻繁に上演されています。
「メリー・ウィドウ」からは、「ヴィリアの歌」や「メリー・ウィドウ・ワルツ」など、数多くの有名な楽曲が生まれました。
これらの楽曲は、レハールの洗練された作曲技術と、ウィーンの華やかな雰囲気を反映しており、オペレッタ音楽の中でも特に親しまれている部分です。
まとめ
オペレッタは基本的に軽快でユーモラスな内容が特徴の歌劇です。
一方で、オペラはよく知られている用語で、誰もが聞いたことの作品も多いでしょう。
名作と呼ばれるものが多く、実際に鑑賞したということもあると思います。
オペレッタは、オペラより知名度は高くないようですが、また違った魅力があります。
ここで紹介した作品を通じて、その楽しさやユーモラスな雰囲気をぜひ体験していただければ幸いです。